中公新書 物語〇〇の歴史シリーズ ― 物語なのか ―

前回に引き続き、中公新書の物語〇〇の歴史シリーズについて

 

物語中国の歴史 (1997) ☆☆☆☆

 

物語 中国の歴史―文明史的序説 (中公新書)

物語 中国の歴史―文明史的序説 (中公新書)

 

 

伝説の夏王朝の時代から清朝滅亡までの数千年を290ページ弱にまとめた無謀な一冊。

薄っぺらい内容に終わるかと思いきや、広く浅くわかりやすく各時代のポイントを押さえ、非常にわかりやすい本だった。

世界史の教科書で途切れ途切れに出てくる王朝の勃興~繁栄期だけではなく特色のない時代や衰退期も割愛せず、次の王朝が現れる背景を知ることができた。

 

物語フィリピンの歴史 (1997) ☆☆

 

物語 フィリピンの歴史―「盗まれた楽園」と抵抗の500年 (中公新書)

物語 フィリピンの歴史―「盗まれた楽園」と抵抗の500年 (中公新書)

 

 

中国の歴史とは対照的に、こちらはスペインの支配下になってからの数百年がメイン。

それまでは文字の無い文化が続き、ページを費やすのが難しかったようだ。

群島国家でもあり、隣国との関わりも薄く前半はスペインの支配の著述が中心。

中盤からは西欧への抵抗の時代から近代へと変わるが、なかなかすっきりする革命にも至らず、若干読むのがつらい内容であった。

とはいえ、フィリピンの歴史について知りたい方はまず読むべき本であるだろう。

 

物語ヴェトナムの歴史 (1997) ☆☆☆☆

 

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)

 

 

フィリピンと同じく東南アジアの国であるが、こちらの歴史はやはり違う。

中国と隣接していることもあり、良くも悪くも古くから影響が大きい。

一方では頭を下げつつも、中国という国に飲み込まれることはなく逆に南方へ勢力を伸ばす機会をうかがう強かな国である。

近代となりフランス、日本、アメリカなどと渡り合うことになる。勝ちはせずとも敗北はしないのはこの国が常に選んできた道であり、現代においてそれを最も色濃く投影したのがホ・チ・ミンの半生であるだろう。

 

物語ドイツの歴史 (1998) ☆☆☆

 

物語 ドイツの歴史―ドイツ的とはなにか (中公新書)

物語 ドイツの歴史―ドイツ的とはなにか (中公新書)

 

 

 

ヨーロッパの大国、ドイツ。地理的にもヨーロッパの中心であり、キープレイヤーであることが多かった。しかし、ドイツとして国家が成立していた期間はあまり長くない。

神聖ローマ帝国後は都市国家の印象が強く、ドイツの歴史としてみるにはなかなか厳しいかもしれない。

隣国との関係もややこしく、もう少し地域を絞って数冊に分けた方がわかりやすそうである。

ただし、ドイツという国家が存在感を増していくのはこれからの気もする。

EUの仕組みが一定の成功をおさめるのか、失敗に終わるのかはドイツの両肩にかかっているのではないだろうか。

 

物語ラテンアメリカの歴史 (1998) ☆☆☆☆

 

物語ラテン・アメリカの歴史―未来の大陸 (中公新書)

物語ラテン・アメリカの歴史―未来の大陸 (中公新書)

 

 

ドイツでも広すぎるのにラテンアメリカというと広すぎやしないかとなるのだが、こちらはちょうど良い範囲であった。

話は考古学を超えて地球の草創期から始まる。

マヤやインカ、アステカなどの文明の隆盛とそれを破壊したスペイン人の侵入。

やがて人種は多様化し、本国の影響力は衰えていく。

アジアやアフリカの植民地と比べると、独立は早く、スムーズであったように思えた。

日本とはかけ離れた文化であり、遠い国なのだなあと実感させられる。

世界的に見ても独特な地域であると思う。治安はちと心配だが旅してみたい地域である。