今日はSF界のビッグ3の一人、アーサー・C・クラークの初期作品をいくつか読み終えたので、その記録。
宇宙への序曲
自分が読んだのは旧訳版。
クラークにとって記念すべき長編第一作。
あとがきによると、宇宙旅行のアイデアを普及するための宣伝手段として書かれたフィクションということで、ハラハラドキドキのストーリーというわけではない。
しかし、その後のクラークの諸作品に現れる科学者や技術者の視点はこの時既に確立されている。自分の場合はある程度の年齢に達したことでクラークの面白さに気づけたようだ。
火星の砂
地球と火星を結ぶ定期航路が開設。あるSF作家がその第一便に乗り込んだ。
これまで自分が描いてきた宇宙とは全く違う体験に目を晦ませながらも、思わぬ出会いから新たな人生が開けてゆく。
今回は作家が主人公。SFの世界と実際のサイエンスの世界の違いをまざまざと見せつけられながらもちょっとした冒険を試みたり、火星人?たちとの交流も楽しい。
チューチュー、可愛らしいわ。
地球光
こちらはクラークにしては珍しく戦争もの。と言ってもドンパチがメインではないのだが。
地球とそれ以外の惑星連合は重金属の輸出入を巡って一触即発の状態。
秘密諜報部員サドラーはスパイが潜むとされる月基地の天文台へと潜入。
地球の青い光と、戦闘シーンのクラークに似つかわしくないスペースオペラのようなビームが対照的で印象に残る。
海底牧場
こちらはタイトルの通り海洋もの。
海中でクジラを養殖し、食料として育てている施設にある日やって来た新人監視員。
訓練担当のドン・バーリーは謎めいた様子の彼に興味を覚える。
彼、フランクリンには人に言えない秘密があった。
練習生時代、監視員時代、官僚時代とフランクリンの成長と地球の変化を描く。
最終章はやや否定的な意見も多いが、あとがきにあるように「懐かしい未来」の一つの形であったと言えるだろう。
銀河帝国の崩壊
数億年後の未来、銀河帝国は滅びわずかに残った人類は地球の片隅で侵略者におびえながらひっそりと暮らしていた。
閉ざされた町に住む少年アルビンはかつての文明の痕跡を発見、やがて別の町に辿り着き、ロボットと出会い、そして宇宙へと飛び出して・・
これはジュブナイルと言っていいのかな。
既成概念をぶっ壊す少年の冒険心が描かれているが、クラークらしく外連味のない淡々とした描写が却って緊迫感を映し出す。