久しぶりにSF小説のMVPであるヒューゴー賞受賞作紹介。
1970年 第16回受賞
アーシュラ・K・ル=グウィン著 「闇の左手」 ☆☆☆☆
宇宙連合からかつての植民地である宇宙の辺境、冬の惑星にやって来た使者ゲンリー・アイ。外交関係の復活を目的としてカルハイドという国の王に謁見を試みるが交渉役となっていた宰相エストラーベンが追放される。謁見を諦め隣国に接近するも争いに巻き込まれ囚人となってしまう。エストラーベンに助けられ二人して冬の荒れ地を逃走するがそこはまさしく死の世界であった。
淡々としていながら緊張感の高い文章、両性具有人である冬の惑星の人々の文化や歴史の叙述がまるでノンフィクションのようなル=グウィンの傑作文化人類学的SF。
1971年 第17回受賞
ラリー・ニーヴン著 「リングワールド」 ☆☆☆☆
地球に住む冒険家ルイス・ウーはひょんなことから宇宙へ旅立つことに。彼を連れ出したのは脚が3本に頭は2つ、優れた科学技術を持つパペッティア人のネサスとかつて人類と長年にわたる宇宙戦争を繰り広げた肉食ネコ型モフモフ宇宙人のスピーカー・トゥ・アニマルズ。
そして地球人の女性ティーラ・ブラウンも仲間に加わり計4人(?)となる。
各々目的は違う一行が向かったのは宇宙に浮かぶ巨大なリング状の物体。直径はほぼ地球の公転軌道、中心に恒星があるリングワールド。
かつては非常に高度な文明を持っていたようだが今は原始的な文化が点在するのみ。
奇妙な変化をとげた住民たちと接触しながら一行が目にしたものは。
ル=グゥインとは対照的にこちらは不思議な宇宙人や冒険に次ぐ冒険が詰め込まれた活劇SFの傑作。
1972年 第18回受賞
フィリップ・ホセ・ファーマー著 「果しなき河よ我を誘え」 ☆☆☆☆
19世紀のイギリスの探検家であるリチャード・フランシス・バートン(アランビアンナイトの編者)は死んだ。
と思ったら見知らぬ河の畔で復活していた。
この河の周りにはネアンデルタール人以降に地球に存在した全ての人類が復活していた。衣食だけは保証されており、この地で死んでもいつか河のどこかで復活しているのだ。好き勝手やる人々だがバートンには復活前の記憶がかすかに残る。
ここは死後の世界ではなく何者かが用意した世界であり、その謎を解くために河の上流へ向かうことにしたバートンの冒険を描く。
正直この巻は「この世界についての謎を解こうとする」ところまでで終わってしまっているのだがそれでもめっぽう面白い。
続きを早く読まなくてはと思いつつまだ手に取ることができていないのである。
1973年 第19回受賞
アイザック・アシモフ著 「神々自身」 ☆☆☆☆
アシモフの代表シリーズであるファウンデーションシリーズやロボットものとは関連のない作品。
無限かつ無害といわれる夢のエネルギー「エレクトロンポンプ」を研究する地球の科学者、遠い惑星の人類とは全くかけ離れた知的生命体、そして地球から月にやってきた科学者たちと3部構成で話は進む。
性的なシーンが書けないと揶揄されていたアシモフが半ばムキになって書いたとも言われる作品。もっとも人間ではなく、よくわからない生命体で描写してしまうところは笑える。ストレートに描くのが気恥ずかしかったか、本当に描く能力がなかったのかは今となっては永遠の謎だ。
1974年 第20回受賞
アーサー・C・クラーク著 「宇宙のランデブー」 ☆☆☆☆☆
太陽系にやって来た未知の宇宙船ラーマ。
いずれ太陽系を通り過ぎてしまうのだが、その前に探索を命じられたエンデヴァー号乗組員の冒険を描く。
アシモフ、ハインラインと並ぶSFビッグ3クラークの代表作の一つ。
技術者の冒険を描くのが得意なクラークの真骨頂ともいえる作品。
あくまでも科学的な調査が主であるが、にもかかわらずハラハラドキドキの連続。単純な勧善懲悪とは一線を画したSFの教科書に載るべき作品である。