札幌史跡探訪 ― 真駒内用水近辺 ―

目次 

 

 

1.真駒内用水路 

真駒内公園からさらに南へ。

国道453号線から少し東へそれる。

 

 

ここには札幌市都市景観賞を受賞した真駒内用水の記念碑が設置されている。 

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説明板の文字はだいぶ薄れているが、お雇い外国人のエドウィン・ダンが建設を提唱したこと。現在も残っている区間や受賞の経緯などが刻まれている。

 

上流側。遊歩道は整備されているが水路はだいぶ草木が伸びて、自然に返ったような?

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下流側。こっちは両岸に遊歩道が整備。路面も綺麗で歩きやすそう。草木も適度な量。

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真駒内用水路についての案内板。

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当初は真駒内川から種畜場までの用水路であった。

後に平岸・白石地区の水田灌漑にも利用された。

真駒内用水路の出発点(真駒内川との分岐点)はこの辺り。

 

現在は緑地になっている場所だ。

ここから北へ下っていく。まずはエドウィン・ダン記念公園内を通り抜ける。

エドウィン・ダンと公園横にある記念館についてはこちら。

kamonji224.hatenablog.com

 

ここから国道453号線と並行して北、そして途中から北東へ進路を変える。

その辺りで現在の自衛隊駐屯地の敷地に入り、その後精進川と合流することになる。

現在も水路の痕跡を確認できるのはこの辺りまで。

 

今昔マップを見てみる。

1916年・35年の地図で種畜場付近から北西に進んでいるの何本かの線がおそらく用水路。その先で合流しているのが精進川と思われる。

 

現在の用水路跡と精進川の合流点はこの辺り。

 

澄川あじさい公園の辺りが合流地点。

そしてグーグルマップを見ると公園から気になる緑の線が北へ向かって伸びている。

特に遊歩道が整備されているわけではないが、おそらくこれが埋め立てられた平岸用水の痕跡。ここから天神山を通って現在の平岸街道に流れ込みその先は道路の真ん中に堀割の形で水路が通っていたはずである。

 

再び今昔マップ。

真駒内用水と精進川は合流したのち入れ替わるような形で、精進川は豊平川に沿って北へ進み、用水路は天神山方面などいくつもの流路に分かれて平岸地方に水をもたらした。平岸街道の用水堀は1960年代前半に埋め立てられたので1950年頃の地図までが痕跡を探る最後の資料となる。

 

2.ラーセン農場 

 

現在も残る用水路跡を辿っていくと、少し大きな公園に出る。

道路を挟んで緑町公園と真駒内五輪記念公園という2つの公園が並んでいるのだが、その真駒内五輪記念公園の一角に案内板が建てられている。

 

ラーセン農場跡の案内板

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大正時代にやって来たデンマーク人のラーセン一家が居住していた農場跡。 

 

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木製の碑も建てられていたが、文字はかなり薄れてしまっている。

 

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大きな木に囲まれた広い公園。遊具などはあまりなく、芝生が広がっている。 

 

ラーセンがやって来たのはアメリカ式農業の行き詰まりを解消するため。

北海道各地で開拓が進むものの、アメリカとは土地の広さが違い、地味も場所によっては豊かとはいえない。北海道へやって来た移民たちには技術も乏しく全てを大規模農場にするのは無理があった。

 

そこで、ヨーロッパ式の家族単位で可能な小規模有畜農業が注目される。

エドウィン・ダンの農場で働いていた宇都宮仙太郎は、独立後にデンマークの農業を調査・研究し後の雪印乳業の源流を作った。

道庁もこの取り組みを評価しデンマークから5年契約でラーセン一家を招き、真駒内種畜場で酪農を営んでもらった。他にも道内各地に3軒の農家がやってきたようだ。

ヨーロッパ製の農機具を揃え、牧畜と堆肥を利用した畑作・輪作で自給自足にプラスアルファの商品作物を栽培する。ヨーロッパ風の農法及び生活スタイルは多くの開拓民に影響を与えたが、知事がかわったこともあってこの制度は5年で終わってしまったそうだ。

しかし、デンマークの農業はその後も北海道における農業の手本となり、酪農学園の建学にあたっても大きな影響を与えたそうだ。

 

北海道と西洋農業の関りについてはこのページも参考にしました。

kai-hokkaido.com